できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

春コミに行ってきた

 春コミに行ってきた。
 もはや混雑の代名詞のようにコミケの話題でしか聞くことのない東京ビッグサイトという施設名、最寄り駅も知らぬままにこれまでなんとなく敬遠していた。人混みへの耐性が低い自覚があるので今後も行くことはないだろうと思っていたその場所に、どうしても行きたい用事ができてしまい日曜にお邪魔してきた。
 ネット上で創作小説を楽しませてもらっている書き手の方が新刊を出すと言う。先行公開で読んだいくつかの話は私の好みに直撃し、絶対に新刊を読みたいと思った。のだが、販売は今のところ春コミをはじめとしたイベント会場のみで、オンラインでの販売予定はないとのこと。求める創作物を追うか、人混みのない穏やかな休日を過ごすか……。そもそも春コミというイベントについて何も知らない状態だったので、いろいろ調べつつ前日(もはや当日の朝)3時くらいまで行くかどうか悩んでいた。
 翌朝、割かしすっきりと目が覚めたので東京ビッグサイトへと向かう。最寄り駅は東京ビッグサイト駅と言うらしい。わかりやすい。開場3時間前から待機できるらしかったが、私が着いたのは開場10分後くらい。それでも30分くらいの待機で会場に入ることができた。開場はジャンルによっていくつかの建物に別れていたが、お目当てのブースの建物が一番近かったのもありがたかった。文フリのような気持ちで各ブースを物色しつつ、今回の目的地へたどり着くと、そこには既に長蛇の列ができていた。文フリで言うと胎動短歌並みの列の長さで、他のブースト比べても異色の人気であることは一目瞭然だった。時間はたっぷりあるのでのんびり並ぶ。隣に並んでいた女の子と二、三会話する。前に並ぶ二人もその場が初対面らしかったが、ハイキューやブルーロックの話で盛り上がっているようだった。
 20分ほど並んだところで、今回の新刊が完売したとアナウンスが入る。ここで私の目的も果たせないことが決まってしまったのだが、他のお目当てもなかったのでなんとなく並び続ける。新刊が完売したことで列を抜けた人たちがちらほらいて、そこからは10分もしないうちに列の先頭まで来た。せっかくなので、残っていた既刊3種を1部ずつ購入する。後ろはまだまだ長蛇の列だったので、書き手さんにまともに声を掛けることもできずとりあえずお礼を言ってブースを去った。
 目的を果たすと(厳密には果たせていないのだが)なんだかどっと眠気がおそってきて、早めに帰ろうと思い出口へ向かうことにした。途中、いくつかの建物を横切る中であらゆる作品を目にした。そこかしこに熱を帯びた創作意欲が形となって並べられているのはとてもおもしろく、わくわくする光景だった。小説、イラスト、ネイルシール、着ぐるみ用の衣装。それから、己自信を創作物とした所謂コスプレイヤーの方々。東京の一角にこれだけの創作の結晶が集まるこうしたイベントのこと、実際に体感できてよかったと思う。人混みは苦手だけれど、それを凌駕するたのしさがあった。
 二次創作はグレーゾーンだし、賛否両論あるけれど、もしきちんと摘発することになったとしたら、これだけの力を抑圧してしまうのはあまりにもったいないと思った。だからグレーのままで息をさせてもらえているのかもしれないけれど。原作者や原作への深いリスペクトを持つことと、原作者が黙認してくださっていることは大前提として、それが各人の解釈や考察、想像によって新たな世界へ広がっていくのは素敵なことのように思えた。何かを創るということは生きることに少し似ているようにも思う。
 家に着くことにはまだお昼だというのにすっかりくたびれていて、適当にスーパーで買ったビビンバ丼を食べてお昼寝をした。創作は創るのも触れるのも、本気であればあるほどパワーが要る。食べて寝て、元気な心身を維持しつつ、私も創作を頑張ろうという気持ちになれた日曜だった。

 ところで今回逃した新刊、どこかで買える機会が来るだろうか……。

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