できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

気高く咲き遂げる

 花束を、自分のために買った。

 あくまで人に贈る風を装って「プレゼント用で」なんて言ってしまったが、ほんとうは何も恥ずべきことではないと思っている。もし友人が同じことをしようとしていたら、諸手を挙げて肯定するだろう。


 5年働いた会社を辞めることにした。それは大きな決断で、私にとっては今よりすこし、自分を好きになれる選択だった。

 何もかも未熟でがむしゃらに生きた1年目。職場にも仕事にもうまく馴染めなくて、食事を受けつけられなくなった2年目。私を育成してくれた先輩が異動になり、初めて大きな仕事を任されるとともに、初めて大きなミスをやらかした3年目。心を入れ替えて姿勢を改めたら、仕事が楽しくなった4年目。後輩指導や新しい仕事を任されて、毎日陰で泣きながら全力で取り組んだ5年目。人生の最優先事項に仕事を置いて、駆け抜けてきた5年間だった。

 なかなか好きになれなかった今の仕事も、職場の先輩方も、今では好きになれた。「生きるため」「お金を稼ぐため」ではなく、チームに貢献するために働きたいと思えるようになった。悔しかったことも、つらかったことも、うれしかったことも、優しくされたことも確かにあって、そのすべてをちゃんと「いい経験」に昇華させることができた。ここを去っても忘れないように、こうして記しておく。

 花弁にはお店の人の提案でラメをつけてもらった。それは私が日々泣きながら働いた象徴であり、同時に決して職場では涙を見せなかった象徴だ。花はこれから数日気高く咲き誇り、そしてうつくしく役目を終えていくだろう。今の私が、この会社にとってそうであると信じたい。

 お疲れ様、私。よく頑張ったね。

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