できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

さよならビーチサンダル

 目を逸らしていた夏の終わりを、そろそろ認めざるを得なくなってきた。

 南の方に数日行っていたので、東京に戻ってきたらすっかり風が秋の冷たさをはらんでいて驚いた。お気に入りのサンダルも今年はもう長く履けないだろう。旅先でぎりぎりまで夏を感じていられたことは幸運だったかもしれない。夏の終わりにしんみりすることもなく、すっぱり季節は切り替わっていた。

 涼しさを通り越して、もはや肌寒さすら感じる外気。干上がってしまいそうなほどのあの暑さは夢だったのかと思えてくる。だけど遅めの夏休みを楽しんできたばかりの私の肌は、例年よりいくらか灼けていて、それは私が確かに楽しい夏を過ごしたことの証明だった。スマートフォンの写真フォルダを見返さなくてもこうして思い出せるきっかけがあることがうれしい。

 これから半年ほど、寒さは増す一方だろう。寒く長い季節を乗り越えるために、楽しい予定を考える。あと1ヶ月もすれば紅葉狩りができるだろう。11月になれば酉の市がある。今年は三の酉まであるから、人もうまくばらけるだろう。クリスマスには、ちょっといいケーキを買ってみるのもいいかもしれない。抗いようのない四季の移ろいを、楽しむことで受け入れる私たちは、案外逞しい。変に力を入れず、流れに身を任せる。それがウォータースライダーを楽しむコツなのだと学んだのは、小学生の頃だった。

 クローゼットの奥の方に仕舞われていた秋服を出す。今日から3連休、今度は北の方へいく用事があるので、東京よりさらに寒くなるだろう。春ぶりのお気に入りのパーカーに袖を通せることを楽しみに思いつつ、秋の装いを圧縮してキャリーバッグに詰めた。40L前後の秋を転がしながら空港へ向かう。新しい季節を楽しむために、現地に着いたらこの時期限定のグルメを、文字通り味わい尽くそうと思う。