できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

棺に入れる花じゃなく、部屋に飾る花をさがすようになった

 外に出た途端、かしましい蝉の声が耳に飛び込んできて思わず苦笑してしまった。早々に梅雨が明けてから夏真っ盛りのような天候が続いていたので、まだ8月にも入っていなかったことに驚く。でも夏は好きなのでうれしい。あと1か月はこの季節をたのしめるということ。
 以前友人がたくさん分けてくれた水出しのお茶を毎晩寝る前に仕込んでは、朝からのどを潤している。フレーバーティーは食欲がない時ものどを通りやすい。500mlのティーポットでつくっても家を出るまでにすべて飲み尽くしてしまうので、倍のサイズのポットを新調した。それから、ティーパックも。パイナップルのアールグレイ、ライチの麦茶、マンゴーとグレープフルーツのルイボスティー。すべてカレルチャペック紅茶店のものだ。お茶を分けてくれた友人の影響を、しっかり受け継いでいる。
 日々の習慣があるというのはよい。およそ丁寧とは言い難い生活の中で、歯みがきや洗顔といった「必要なこと」を除いて自主的に毎日行っていることがあると、それだけですこし生活が潤うように思う。寝る準備がすべて整った後、水出しのお茶をセットして、花瓶の水を替える。文字にしただけでも、素敵な生活に見えてくる。死ぬことばかり考えていた毎日から、ここまでこころが回復したことが本当にうれしい。
 元気になるにつれ、人との予定も入れられるようになってきた。コロナがいっとき落ち着いたことや、挙式をしたことなどもそれに拍車をかけた。疲れない程度に予定を入れては、ノンストップでしゃべり倒したりお腹が痛くなるまで笑ったりしてひとときをたのしんでいる。心身が健やかで、大好きな人とたくさんお話しできることに勝る幸福はないかもしれない。
 メンタルの大波を経て、こころの健康をもっとたいせつにしようという気持ちが強まった。すこし背伸びして手を伸ばせば届くくらいの範囲にあるものを手放さないように、生きていきたい。季節を味わい、人と会い、花を愛でる。たぶんこれが、自分が息を吸うために必要なものたちだ。自分にとってたいせつなこうしたものを知ることで、自分のことも周囲のことも、たいせつにしていける気がする。死にたがりの自分を生かしてくれたたくさんのひとやものに、私はこれからたくさんの愛をもってお返ししていかないといけない。まずは直近でご飯の予定が入っている大好きな友人たちへ。会えたらとびっきりの愛と感謝を込めて、生命力みなぎる乾杯をさせてね。