できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

過去の青

 自分が書いたブログを読み返していたら、こんな文を見つけて驚いた。

 華金マリッジブルー - できたてガパオライス

 だから入籍を終え、挙式を控えている自分の選択に些か懐疑的だった。決断を早まったかもしれないと。世間的に幸せと思われがちな新婚の身分でおおっぴらに口に出せることではなかったけれど。

 

 確かに自分が書いたものだし、これを書いた日の焼肉がおいしかったこともよく覚えているけれど、実感だけがそこには欠けていて、つくづく人の記憶というやつはあてにならないものだと思う。だからこうして記録するのだけれど。

 ともあれ、今はこうしてそれを書いたことも忘れるくらい気持ちが落ち着いた。一年の延期を経て執り行った挙式は、思惑どおり私に覚悟を決めるきっかけを与えてくれたのだった。

 結婚式が怖かった。人前で腕をさらすのも、自分が一日その場の主役であることも、写真をたくさん撮られるだろうことも。

 だけど終わってみると、式も披露宴も終始たのしかった。私の幸せを一緒に喜んでくれ、私の門出に私以上に泣いてくれる友人たちを見て、たくさんの人に確かに愛されていることを感じた。「来てくれる人に感謝を伝える」というのが、あらかじめ夫と決めていたテーマだったけれど、結局またたくさんのものを受け取ってしまった。友人たちのうつくしい涙にやわらかく背を押され、不安になる暇もないほど心からの祝福を浴びて、それでようやく、この大きな選択を受け入れることができた。

 

 怖がりな私は、きっとこれから先も様々なことを怖がって生きていくのだろうと思う。選択のたびにそれが正しかったか不安になって、信じられるはずのものを疑ったりして。

 だけどこの日のことを思い出すたび、私は私をちょっぴり好きになれる。ほんとうに大好きな人たちに心から幸せを祝われて、それがいっとう大好きな人といっしょになることだなんて、素敵すぎるほどに恵まれている。人は一人で死んでいくことに変わりはないし、大切な決断は自分で行わないといけないけれど、それでも隣に寄り添ってくれる人がこんなにいるという事実は、私に確かな勇気を与えてくれる。

 近くに見えてきた未知の三十代も、いつか経験することになるかもしれない子育ても。ちいさな段差でこどもが初めて飛び降りを覚えるように、初めて教室の外に広い空があることを知るように、人一倍怖がって、友人たちに縋って、励まされて。そうしてきっと、私はちゃんと前に進んでいける。

 夫と結婚してよかったと、心から思っている。マリッジブルーだった過去の私、この決断は正しかったよ。いつか、三十代を謳歌している未来の私に「怖がりすぎ」って、一緒に笑われようね。