できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

衣を纏う

 ファッションにあまり興味がない。買う時も、着替える時も、服を選ぶという行為がひどく億劫に思える。何かを身につけている、という状態が、あまり好きではないのかもしれない。長袖よりは半袖が好きだし、バッグは両手が空くリュックが好きだし、なんなら携帯も持たない手ぶらがいちばん好きだ。家の鍵の開け閉めも同居人に任せっきりなので、今日はうっかり最後に出たのに閉め忘れかけた。結婚指輪はつけ忘れた。

 9月になってからこっち、そんなにはっきり白黒つける?ってくらい急に寒い日が続いたので、久々に暑い今日がうれしい。そろそろ着納めになる半袖と、白い麻のパンツを履いた。これはゆるっとしているので好き。

 着ているか着ていないかくらいの布を身に纏って、最低限隠すところを隠して、できるだけ身軽に生きていたい。たぶんそうじゃないと、服以外に背負うものが多すぎて、私はいつか歩けなくなってしまう。人生で重荷に感じるものがあまりに多い。

 かつてどこかにあったらしい楽園で誰かが罪を犯してから身に纏い始めたのが衣服のはじまりで、つまりそれは罪の、あるいは知恵の象徴で、だから私は解き放たれたいのかもしれない。服を脱いで、時計を外して、罪も分別もすべて脱ぎ捨てる。そんないつかの楽園を、もしかしたら私の魂だけが覚えていて、たまには帰りたいと、そう私に訴えかけているのかもしれない。

 これからもっと寒くなって、私は冬にかけてどんどん着膨れしていく。ちょうど、赤子が知識を吸収していくように。だからその前に、夏が終わらないうちにもう少しだけ、裸にほど近い薄着を楽しむことにする。