できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

両片想いのたちの悪さよ

 1年半ほど前、職場のお兄さんといい感じになった。もともといいなあくらいに思っていた人だったので、飲み会で言葉を交わしてから仲良くなるのは早かった。その時私には付き合っている人がいたけれど、お兄さんは彼氏と似ているようで異なるタイプで、そんなところにぐらりときた。


 たぶん今私がフリーだったら、もしくは悪い女だったら、キスしてるだろうなとか、付き合っちゃっただろうな、と思うシーンに何度か遭遇して、その度理性が踏みとどまった。お兄さんの好意も確かに感じていたし、あちらはフリーだったので、私の理性があと少し弱ければ完全に褒められたものではない三角関係ができあがっていたと思う。


 これ以上はまずいなあってなんとなくお互い思っていたところにコロナが流行し、私たちの距離感はもとの正常なものに戻った。


 正常な、と言っても、周囲から見たら以前も今も私たちの関係は変わらず「仲のいい同僚」で、だけど私たちだけが知る距離感の変化がそこには確かにあった。そしてそれを感じるたび、さみしいような落ち着かないような、変な気持ちになるのだった。おそらく私だけが。


 実はその変な気持ちは今も健在だ。お兄さんとは振り向けばすぐに声をかけられるくらいの距離感で仕事しているけれど、普段はチームも違うので言葉を交わさずに1日を終えることが多い。それでもたまに、たとえば今日のように会話をすれば、そのテンポのよさに心地よさを感じてもっと話したいと思ってしまう。


 今日はオフィスを出る時間もかぶったので、思わず一緒に帰りましょうって声をかけそうになった。こういう気持ちで声をかけるのはよくない気がして、電車には乗らず2駅歩いた。歩いて雑念を払おうと思ったのに、結局30分の間ずっとこの奇妙な関係性について考えてしまった。そのまま乗った電車の中でこの文章を書いている。


 参考になる母数があまりに少ないのでわからないが、元彼との距離感ってこんな感じなんだろうか。何か理由があってお別れした元彼以上に、一歩を踏み出さなかった両片想いというのはたちが悪い気がする。嫌いになる理由がない。


 今こんな気持ちを抱いているのが私だけというのも、余計に追いたくなる原因なのかもしれない。お兄さんの割り切りのよさに尊敬すら覚える。


 文字に起こしたら少し冷静になってきたので、このグレーゾーンな文章を公開するのはやめようかと思ったけれど、せっかくなのでこのままにする。一線は超えていないし、お兄さんに一時期心が動いたのも本当のことだし。法を犯さない、人を不必要に傷つけない範囲で、私はいつだって自分に素直でいたい。