夜の街にひしめく光を、神様は綺麗だと思うだろうか。
私たちがこれをあたたかいと思うのは、明かりの灯る家を知っているから。暖炉の薪が燃える音、湯気を立てるスープ、家族の笑い声。それら全部、神様には何も関係なんかなくて、だから雑音のようにその目を通り過ぎていく。
人工の夜景が綺麗だなんてこと、知らないままで大人になりたかった。突き刺すような寒気の中で燃える星たちだけが夜のなかで唯一美しいものだって、ずっと信じていられたら、僕たちはいつか神様になれたかもしれないね。
人間を辞められないまま、住所にはならない街で夜景を見下ろせば、不死身じゃない僕はこんな世界でもどうしようもなく生きていたくなるよ。