できたてガパオライス

ゆすらの日常。毒にも薬にもならないことばたち。

東京

 身体と心がそれぞれの自我を得たまま、もうずっと、互いを無視して日々が過ぎていく。どちらの悲鳴も、ついでに怒りも悲しみも押し殺して、そうして息のしやすくなった世界には、花は咲かないし月も昇らない。東京に星も月も見えないのは、みんなそれと引き換えに呼吸をしているから。選ばなかったもの、選べなかったもの、捨ててきたもの、全部綺麗で、こんなのもったいないって言うなら、きみが拾ってよ。どこかの町でやさしく光る星も、どこかの子どもが描けばひどく鋭利で棘だらけ。それすら愛せるなんて崇高ぶっちゃうきみがいつか百合の花で息ができなくなっても、そんな夜でもきみの世界にはちゃんと、月が昇って星が瞬くんだろう。

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